Samsung PB-22J 新ファームウェアのベンチマーク

前回の記事で述べたとおり、Samsung社製コントローラ搭載SSD(PB-22Jシリーズ相当)のファームウェアがアップデートされました。正確なリリースノートは公開されていないようですが、Trimに対応したことが目玉となっています。今回は、MasterDrive SX(PB-22Jシリーズ相当)の64GB版を最新ファームウェアにアップデートし、ベンチマークを行ってみました。

まずはCrystalDiskMakr 3.0 Beta2から。これらのテスト結果には再現性があり、何度やってもほぼ同等の結果が得られます。

  • テストサイズを1000MBにするとランダムライトの結果が落ち込む
  • ランダムライト4Kの結果は、いずれも最初の1回目のもの。2回目以降はQD32のテストと同程度の性能しか出ない
  • NCQが全く効いていない

1つめの特徴は、JMF602MTRONといった旧世代のSSDと同じです。すなわち、SSD内の予備領域の一部をあたかもキャッシュのように用いているため、そこからデータが溢れるとパフォーマンスが下がってしまうというものです(詳細はこちら)。おそらく、その領域の大きさが1GBより小さいのでしょう。
2つめの特徴は、おそらくDRAMキャッシュのためでしょう。4Kの書き込みにしか効いていないのは、大きな書き込みをキャッシュするとあっという間にバッファが埋まってしまうため、ある程度のサイズ以上の書き込みはキャッシュを通さずに直接NANDに書き込むような仕組みがあるからだと思われます。
3つめはもう残念ですとしかいいようがありません…
次に、Iometerを用い、ランダムライトによって性能低下が引き起こされるかどうかを計測してみました。1分の1MBシーケンシャルライト→30分の4KBランダムライト(正確には1分x30回)→1分の1MBシーケンシャルライトというテストパターンによる計測です。
結果は、最初のシーケンシャルライトが140.16MB/s、2回目のシーケンシャルライトが134.72MB/sと、ほとんど性能低下が発生しませんでした。

まとめと考察

CrystalDiskMarkの結果を見る限り、このシリーズは、旧世代のSSDDRAMキャッシュを乗せただけのように感じられます。これならMTRONJMF602のように、性能低下はあまり起こらないのではないかと予想されます。実際に、Iometerのテストではほとんど性能低下が発生していません。このIometerのテストではTrimが送信されることはないため、Trimによる性能回復が起こっているわけではありません。
しかし、例えばPC Perspectiveの記事AnandTechの記事では性能低下が報告されているので、もしかすると新ファームウェアでは挙動が変化したのかもしれません。
なお、こちらの環境では、HD TuneやIometerでパーティションの無い状態でのテストを行うと、シーケンシャルライトの結果が50〜70MB/s程度しか出ず、正確な測定ができません。HD Tuneの方は4.0で導入された"Full Test"のオプションを有効にしているので完全なシーケンシャルライトになっている筈なんですが… しかもHD TachはWindows 7では動きません。
いずれにしても、このSSDはパフォーマンス面であまり期待できないのは間違いありません。ノートPCに搭載された実績が多いという面で多少安心感はありますが、それなら東芝を選んだ方がいいような予感もします。

SMARTモニタリングについて

実は結構前からSamsungSSDのSMARTの内容は公開されていたそうです(こちらの26ページ)。すでにCrystalDiskInfo 3.3.0ではSamsungSSDをサポートしています。
しかし、残念なことにAverage Erase Countなどは公開されていないため、SamsungSSDの寿命推定を行うのは無理そうです。B1の"ウェアレベリング回数"や仕様が公開されていないE8,E9について、シーケンシャルライトを行いながら変化を調べるプログラムを書いてみたのですが、いずれの値も書き込み量そのものとは相関がないようでした。