SSDと液晶ディスプレイのアナロジー

自宅のPCをデュアルディスプレイにしたくなったので、HyundaiのW241DGを購入しました。
W241DGは、廉価ながらLGのH-IPSパネルを採用している日本限定モデルです。H-IPSパネルは、視野角が非常に広く色ムラが少ないという特徴を有しています。別のPCでBenQのG2400W(24インチ、TNパネル)も使っているのですが、こちらは単色を表示しているはずなのに美しいグラデーションが拝める状態で、W241DGとの差は歴然としています。
LGのIPS系パネルには特有のギラツキがある上、IPSの特性上コントラスト比や輝度はそれほど高くありません。しかし、この製品はグレアパネルを採用することでこれらの欠点を押さえ込んでいます。もちろんグレアが嫌いな人には向かないでしょうが、個人的にはそれほど目が疲れる感じはせず、光の反射も気になりません。ただ、輝度を最低にしてもちょっと明るすぎる気がします。目を近づけ過ぎなければ大丈夫ですが。

さて、SSDと液晶ディスプレイには、以下のような似かよった特徴があります。

  • 大部分の"メーカ"は実際には中身を作っておらず、主要部品は他社から購入したものである
  • ユーザにとって本当に重要な情報がスペック表に表れにくい

最初の特徴についてですが、大部分のメーカは液晶の場合はパネル、SSDの場合はコントローラとFLASHチップを他社から購入し、それを組み立てて販売しています。すなわち、"三菱の液晶ディスプレイ"と言ってもパネルはLG製だったり、"TranscendSSD"と言ってもコントローラはJMicron製、FLASHチップはSamsung製だったりするわけです。これは、PCについて詳しい人なら当たり前の知識ですが、一般の人にはあまり知られていないようです。
次の特徴についてですが、液晶ディスプレイの場合は色ムラや視野角、SSDの場合は言うまでもなくプチフリについてのことです。
液晶ディスプレイのパネルには、大きく分けてTN,VA,IPSという3種類があり、最近のディスプレイの大部分はTNパネルを採用しています。TNパネルは廉価ながら応答速度が速いという特徴がありますが、VA,IPS両パネルに比べると著しく視野角が劣っており、そのため色ムラが激しいという欠点があります。特に大画面のディスプレイではこれらの欠点は顕著に現れますが、最近は24インチですら大部分がTNパネルを搭載しています。
消費者にとっては嬉しくないことに、これらのTNの欠点はあまりスペック表に現れません。一般的なスペック表に掲載される"視野角"の基準は非常に甘く、TNパネルであっても160度以上の数値が出てしまい、VA,IPSとの差は大きくありません。逆に、TNパネルはそもそも応答速度が速いですし、最近のTNパネルはコントラスト比もかなり高いため、スペック表は豪華になります。実際には、この辺の数値の差はほとんど知覚できないレベルのような気もしますが…
欠点がスペック表に表れないという点では、SSDプチフリに関しても同様です。メーカが表示しているシーケンシャルの速度はもちろん、CrystalDiskMarkのRandom 4kの値ですらプチフリを見分ける手段にはなりません。唯一、Iometerでランダム書き込みを行ったときのMax Response Timeがある程度の指標になりますが、できればResponse Timeをヒストグラムにできるソフトが欲しいところですね。
なぜプチフリが起こりやすいSSDばかり発売されているのかという疑問をしばしば目にしますが、この問題は前述した第一の特徴に起因しています。すなわち、主要部品(この場合コントローラ)を作っている会社が少なく、コントローラを自作できるほどの技術力のないSSDメーカにとって、現実的な選択肢はほとんどJMicronだけしかないのです。PhisonやSilicon MotionのコントローラはJMicronのコントローラよりさらに性能が低く、MTRONは他社にコントローラを販売していません。最近ようやく、CorsairがSamsung製コントローラを搭載する製品を発売しましたが、スペック表ではJMicron勢に劣っている上に高価であるため、商業的に成功できるかどうかは難しいところだと思います。また、期待の新コントローラIDX22に関しては、OCZのVertexシリーズはなかなか発売されず、SuperTalentのUltraDriveシリーズは発表以来音沙汰なしという状態です。
このように、液晶にしてもSSDにしても、ユーザにとって本当に重要な情報を得るためにはオタクになる必要があるのが現状です。この分野が趣味の人はいいのですが、一般的なユーザには何とも不親切な状況ですね。

参考URL

TN?VA?IPS? --液晶パネル駆動方式の仕組みと特徴を知ろうITmediaによる各パネル形式の特徴の解説
TN Film, MVA, PVA and IPS - Panel TechnologiesTFT Centralによる各パネル形式の解説(英語)。P-MVA,AMVA,H-IPSといった各社それぞれの形式についての詳細な解説が載っています