SSDのランダムライトを高速化するソフト"MFT"を試してみた

EasyCoという会社から、SSDのランダムライト速度を大幅に向上するというソフト"Managed Flash Technology(MFT)"が販売されています。MFTは正確にはソフトというよりドライバで、MFTで高速化したドライブは通常のドライブと全く同様に使用することができます。
このソフトは、OCZの掲示板などで話題になっていますが、日本語での紹介はまだないようです。そこで、以下ではMFTの使用方法とベンチマーク結果についてまとめてみました。
結果から先に述べると、SuperTalent MX Rev.Bでのベンチマーク結果は目を見張るほど向上しました。
CrystalDiskMarkのWriteの結果はIntel並みになり、コピー速度はHDDやSLCのSSDに匹敵するほどになりました。代償として、SSDの記憶可能な容量が約1割減少しますが、性能の向上に比べれば十分許容可能な値ではないかと思います。
なお、今回のエントリはインストール方法とベンチマーク結果のみにとどめ、このソフトの高速化の原理については後日まとめる予定です。

MFT30日体験版インストール手順

アクティベーション・インストールの手順は若干複雑なので、以下に詳細を記しておきます。なお、今回は製品版ではなく、30日体験版を利用しました。なお、以下はWindows XPで試した内容についてのみ記しています。Vistaではそれほどやることは変わらないと思いますが、Linuxは多少手順が異なるようです。

  1. シリアルナンバーの取得
    まず、こちらのページからシリアルナンバーを取得する必要があります。個人情報のほか、Windows/Linuxのどちらを使用するかと、試したいドライブの最大容量("Choose the gigabyte size of MFT Volume you wish to test"の項)を入力する必要があります。情報を送ると、メールでシリアルナンバーが送付されます。なお、記入は任意になっていますが、以下の項目があります。
    1. LinuxカーネルのバージョンまたはWindowsのサービスパックの状態
    2. SSDのブランドと型番
    3. 複数ドライブで試したい場合はその個数、およびRAIDのレベルや他のメカニズム(JBODとかのことか?)の内容
  2. ソフトのダウンロード・インストール
    Windowsの場合はこちらのページLinuxの場合はこちらのページにダウンロードページへのリンクがあります。Windows版は、普通にインストーラをダブルクリックするとインストールが開始されます。
  3. Lincese Request Codeの取得
    次に、インストールしたMFTを起動し、"License and Activation"タブを開きます*1。そこに、取得したシリアルナンバー、シリアル取得時に申請した最大容量を入力し、"30 Days Demo"にチェックを入れます。すると、中央の色違いの部分に、Serial Number, License Config, System Keyの3つが表示されます。
  4. Activation Codeの取得
    次にこちらのページから、シリアルナンバーとは別にActivation Codeを申請します。シリアルナンバーを申請したときと重複する項目の他、前項で生成された3項目を記入します。3項目が正しく入力されていれば、Activation Codeがメールで送付されます。
  5. ソフトのアクティベーション
    起動中のMFT for WindowsのLicense and Activationタブ内の、"Enter Activation Code"と書いてあるテキストボックスに、メールで送られてきたActivation CodeをコピペしてActivateボタンを押すと、ようやくMFTが使用可能になります。
  6. ドライブのフォーマット
    MFTで利用するドライブは、一旦フォーマットする必要があります。コントロールパネル→「管理ツール」→「コンピュータの管理」→「ディスクの管理」に進み、対象のパーティションを右クリック→「パーティションの削除」として一旦削除します。当然ながらデータは全部消えてしまうので、必要なデータはバックアップしてください。次に、削除したパーティションを右クリック→「新しいパーティション」としてフォーマットを開始します。パーティションの種類は"プライマリ"、パーティションのサイズは申請したサイズ以下、ドライブレターは任意とし、最後に「このパーティションをフォーマットしない」にチェックを入れて完了してください。
  7. MFTドライブの作成
    MFT for Windowsから、Drive Layoutタブを選択します。すると、"Drives Ready for MFT"という項目の中に、前項でフォーマットしたドライブがあるはずです。その横の"Install"ボタンを押すとMFTドライバのインストールが開始されます。設定値はおそらくデフォルトのままで問題ありません。これが無事終了すれば、ようやくインストールの完了です。後は、通常のドライブと同様に使用することができます。

ベンチマーク結果

元のSSDの容量は112.67GBでしたが、MFTドライブの容量は101.398GBに減少しました。なお、なぜか管理ツールからはMFTドライブが112.67GBのNFTSドライブとして見えていました。
以下にベンチマークの結果を記します。通常状態での結果は、以前のエントリと同一です。*2

状態 Seq. Read Seq. Write Read 512K Write 512K Read 4K Write 4K Copy 500Mx1 Copy 512kx1000 Copy 4kx5000
Rev.B 通常(空) 129.230MB/s 79.426MB/s 112.937MB/s 52.915MB/s 6.988MB/s 1.619MB/s 10.630MB/s(47.037sec) 3.062MB/s(163.305sec) 0.512MB/s(38.130sec)
Rev.B 通常(70GB使用) 114.373MB/s 75.764MB/s 107.742MB/s 44.649MB/s 7.024MB/s 1.506MB/s 11.088MB/s(45.094sec) 3.049MB/s(164.010sec) 0.105MB/s(185.659sec)
Rev.B MFT(空) 120.540MB/s 71.820MB/s 112.694MB/s 70.455MB/s 8.398MB/s 45.626MB/s 36.642MB/s(13.646sec) 32.110MB/s(15.571sec) 4.513MB/s(4.327sec)
Rev.B MFT(70GB使用) 111.872MB/s 68.633MB/s 95.483MB/s 32.671MB/s 7.113MB/s 27.462MB/s 23.549MB/s(21.232sec) 18.527MB/s(26.988sec) 2.531MB/s(7.718sec)

CrystalDiskMarkのWrite 4KBの値が大幅に向上している他、コピー速度もHDDやSLCのSSD並みに向上しました。ディスク使用量が大きくなったときの性能低下は若干気になるところですが、それでも元のディスクに比べればかなり性能が上がっています。

製品版ラインナップと価格

この価格表に製品版のラインナップが載っていますが、ちょっと分かりにくいです。
おそらく、機能を表にすると以下のようになると思います。

名前 価格 SSD台数制限 RAID 容量制限 備考
MFT-SD $125 1 不可 128GB
MFT-SSD $250 1 128GB
MFT-SD256 $600 1 256GB
MFT-SD512 $1400 1 512GB
MFT-MLC 32GBあたり$125 なし - 寿命最適化
MFT-ENT 32GBあたり$250 なし - 速度最適化
MFT-HDD 32GBあたり$20 なし - 上記のいずれかと併用

MLC/ENT/HDDの各バージョンは、作成したいドライブの容量によって価格が変わります。たとえば、MLCバージョンで128GBのドライブを作成したい場合は、$125x4=$500となるようです。
(コメント欄でご指摘いただきました。ありがとうございました。)
正直、このソフトはちょっとお高いですね…

結論

以上のように、MFTの利用により、SSDのランダムライト性能とコピー性能を大幅に向上することができました。
もしかすると、MFTによって、CFDのSSDCR-9000など、ランダムライトの速度が異常に遅いストレージが使い物になるかもしれません。このあたり、個人的にも気になるところです。
ただし、セットアップ手順でお気づきになられたかもしれませんが、途中にディスクのフォーマットが必要なため、起動ドライブをMFTドライブにすることはできません。EasyCo社のWebページによれば、今年の12月までにMFTドライブを起動可能にできるよう改良するということです。

*1:確か、最初に一度再起動を求められたと思います。記憶で書いているので申し訳ありません

*2:再計測は一応したのですが、ほとんど同じ結果だったのでそのまま転載しました