現実の殺人事件の捜査方法(1)

多くのミステリー小説・ドラマでは、必ずといっていいほど警察が登場します。また、踊る大捜査線をはじめとする刑事もののドラマも根強い人気があります。
しかし、ミステリーや刑事ドラマファンの間でさえ、実際にどのようなプロセスで捜査が行われるかということについては、あまり知られていません。そこで、今回は、東京警視庁を例として、現実に殺人事件の捜査がどのように行われるかについて述べます。

特別捜査本部の開設まで

殺人などの重大な事件が発生し、早期解決ができなかった場合、「特別捜査本部」、いわゆる「帳場」が開設されます。まず、この「特別捜査本部」が開設されるまでのプロセスについて記します。

まず、事件の通報があってから、最初に駆けつけるのは所轄署の交番勤務の警官(刑事ではない)です。まあ当たり前ですが、地理的にもっとも近くにいる警官が最初に到着するわけです。
警官が到着し、事件が確認されると、次に所轄署の強行班係の刑事、鑑識、そして機動捜査隊(機捜)が現場に臨場します。機動捜査隊というのは、重大事件の初動捜査を専門とする組織です。機動捜査隊は担当地域をパトカーで巡回しており、指令が入るとその現場に向かいます。多くの場合、到着は機動捜査隊の方が早いようです。
所轄署と機捜の捜査によって殺人事件の可能性があると判断されたとき、次に到着するのは、警視庁捜査一課の「庶務担当管理官」です。庶務担当管理官によってさらに事件性が確認されると、ようやく捜査一課の殺人班に出動命令が下ります。捜査一課の刑事はそれから現場に赴き、捜査に参加します。
初動捜査に携わる刑事は、通報者や目撃者からの事情聴取、周辺の住民への聞き込みなどを行い、犯人の捜索を行います。そして、その初動捜査で犯人が確保できなかった場合、「特別捜査本部」が開設され、本格的な捜査が開始されます。
余談ですが、「踊る大捜査線」の第一話では、湾岸署の強行班係・鑑識と機動捜査隊が到着した後に捜査一課殺人班が臨場するのがちゃんと再現されていますね。

次回は、特別捜査本部の編成についてです。