星までの距離を測る(1) 宇宙の構造とその大きさについて

一週間以上の間、学会という現実に引き戻されてしまいました。とても鬱です。

さて、宇宙関連のテレビ番組や博物館などでは、「地球から何々星までは何光年の距離があります」といった説明をよく耳にします。言うまでもなく、地球から他の恒星に行くことは現在のところ不可能です。それでは、どのようにして地球から他の星までの距離を測っているのか、というのが今回のテーマです。

距離の計測方法を求める前に、宇宙がどのような構造をしているか、その大きさ・距離の現時点での計測値についてまとめます。本来の順序*1とは逆ですが、先にこの構造を知っておく方がポイントを理解しやすいと思います。

なお、今回の日記は、特に数値面に関して、Wikipediaから多くを引用しています。

宇宙の構造―銀河・銀河団・超銀河団

宇宙は、階層的に星々が集合する構造を持っています。すなわち、多数の星が集まって銀河を形成し、多数の銀河が集まって銀河団(小規模のものを銀河群と呼ぶ)を構成し、それがさらに集まって超銀河団を形成しています。その空隙には、少なくとも観測可能な電波(光を含む)を発する物体はほとんど存在しません。

星(恒星)は、宇宙空間に散在しているのではなく、狭い領域(あくまで宇宙全体から見て狭いという意味)に密集して存在しており、その星の集まりを銀河と呼びます。太陽が所属している天の川銀河は、直径8〜10万光年、厚みが中心部で約15,000光年、周縁部で約1,000光年の凸レンズ型構造を持っています。その中に含まれる恒星の数は、約2000億〜4000億個と推定されています。普段、我々が"星"として認識しているものの多くは、この天の川銀河内の太陽系に近い星々です。

銀河はさらに局所的な集合を作っており、それを銀河団・銀河群と呼びます。天の川銀河が属する銀河群(局部銀河群とも呼ばれる)は、現在発見されているだけで40個程度の銀河で構成されています。大規模な銀河団は、1000個以上の銀河を含むものもあります。こちらの記事によると、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡により、かみのけ座銀河団内の1,000個以上の小銀河が観測できたとのことです。なお、銀河団の大きさは、おおむね800〜1,600万光年程度と推定されています。

同じ銀河団・銀河群内では、銀河と銀河同士の距離は、数万光年〜数百万光年です。たとえば、天の川銀河から最も近い銀河は「おおいぬ座矮小銀河」と呼ばれる小さな銀河で、およそ約4万2千光年先にあります。天の川銀河付近で最大の銀河であるアンドロメダ銀河は、およそ230万光年先にあります。

銀河団同士は、数千万光年の距離を取って集まっており、それは超銀河団と呼ばれています。たとえば、おとめ座銀河団内の銀河は、平均すると天の川銀河から約6,000万光年離れています。超銀河団は1億光年にも達する大きさを持っており、超銀河団うしの間には、数億光年にも及ぶ観測可能な星のない空隙(ボイド)が広がっています。


このように、宇宙は入れ子状の構造をしており、たとえば数光年先の恒星との距離と、数億光年離れた銀河との距離を同じ手法で計測することはできません。

そのため、まずは近くの天体までの距離を求め、それを基にして別の方法でより遠くの天体までの距離を求める、という手法を用います。このような測定方法を総称して、「宇宙の距離梯子」と呼びます。梯子を一段ずつ上るようにして、遠距離の天体までの距離を徐々に求めていくことから、このような呼び名がつけられています。

次回以降では、具体的に距離を求める手法について解説したいと思います。

*1:様々な星や銀河との距離を測定できたために、宇宙がどのような構造をしているかがわかってきたわけです。