最新護衛艦「ひゅうが」(3) ひゅうがは軽空母になれるか?

昨日までの日記で、「ひゅうが」の主目的は対潜水艦戦用のヘリの運用であり、固定翼機の搭載は不可能であることを解説しました。ところが、ネット上で散見される説に、「ひゅうがは簡単に軽空母に改造できる」というものがあります。今日の日記はその話題についてです。
この問題は、論点が三点に分離できます。

  • 軽空母への改装は簡単に(新しい艦を作るより安価、かつ短期間に)可能か?
  • 改装できたとして、そのような艦を保有する意義はあるか?
  • 保有する意義があるとして、戦力として期待できるか?

以下では、それぞれの項目に関して分析したいと思います。なお、今日の日記の内容には多くの推測が含まれています。もし、明らかに誤っている点などありましたらご指摘をお願いします。

軽空母への改装は簡単か?

この問題については、Wikipedia内の海上自衛隊の航空母艦建造構想のページに詳細にまとめられており、これ以上付け加えることはあまりないでしょう。
結論から言えば、「ひゅうが」を軽空母に改装するのは現実味がないと言わざるを得ません。

一つ個人的な意見を付け加えるとすれば、「システムインテグレーションは外野の予想よりはるかに難事業である」ということが挙げられるでしょうか。
職業柄プログラムを書く機会が多いのですが、機能の似ている2つのソフトウェアを統合するという作業はなかなか面倒なものです。内部の構造が決定的に異なっている場合もあり、そのときはほとんど一から書き直しということもあります。さらに、そこにハードウェアが関わってくると面倒さはさらに増大します。
ひゅうがの場合、「対潜ヘリの運用」と「V/STOL機の運用」は外野には似ているように見えますが、それぞれが非常に複雑な作業なので、細部はかなり異なっているのではないでしょうか。
ソフトウェア設計と同様、あらかじめ統合を見越した構成をとるということは可能でしょう。その場合、インテグレーションの手間はかなり省けると予想できます。
しかし、「ひゅうが」をこれから改装するとすれば、その搭載機はF-35一択です。そして、そのF-35はいまだ完成していない上、日本は開発に参加していません。このような状況で細部を見越した備えをしておけるのでしょうか。

以上のように、「ひゅうが」を軽空母に改造するのはかなりの困難が予想されます。しかし、せっかくの現実逃避日記なので、万難を排して空母に改造された後のことを考察したいと思います。

「ひゅうが」改装軽空母の保有に意義はあるか?

そもそも、なぜ空母が必要なのか?ということを考えると、それは自国の航空基地のないところでの航空戦に備えるためだという答えになるでしょう。
この時点で、既に日本にとっては非現実的極まりない想定です。
日本は侵略戦争を放棄している上に海外に植民地を持ちません。また、国内には南の沖縄にも北の北海道にも大規模な航空基地があります。加えて、主力のF-15Jは非常に航続距離の長い機体であり、空中給油機KC-767の導入によりその行動半径はさらに広がる予定です。
よって、軽空母の導入はあまり意味がないという結論になります。
しかし、せっかくなのでさらに一歩現実から後退し、自国のエアカバーのない地域での航空戦を強いられることになった場合、ひゅうが改装軽空母は戦力になるかどうかについても考察したいと思います。