(3)

大変長期間放置して申し訳ありませんが、ようやく続きです。

改めてSSDの寿命とは?

前回までの内容を簡単にまとめると、以下のような感じです。

  • NANDフラッシュの書き換え回数が増えると、ビットエラーの発生率が上昇する
  • SSDUSBメモリなどのコントローラは、ビットエラーが多くなったブロックを無効化する
  • 無効化されたブロックが増え、SSD内に設けられた予備領域が使い果たされると、そのSSDは"寿命"を迎える
  • ビットエラーには、書き込みエラー(書いた瞬間にエラーがある)、保持エラー(書き込みから時間が経つとエラーが発生する)、リードディスターブ(多数回の読み込みを行うとエラーが発生する)の3種類がある
  • NANDフラッシュの種類によっては、保持エラーが非常に大きくなることもある。一方、リードディスターブは概ね無視できるほど小さい

SSDをはじめとするNANDフラッシュの"寿命"を平均書き換え回数で表現するにあたり、話をややこしくしているのがデータ保持エラーの存在です。書き込みエラーだけを考慮するのであれば、SSDに対する読み書きを繰り返し、壊れてしまった瞬間の平均書き換え回数を調べればよいでしょう。しかし、前回の記事にある通り、保持エラーの影響は非常に大きいのです。そのため、"書き込みエラーだけで壊れてしまう書き換え回数"に到達するより手前で使用をやめておかないと、しばらく前に書き込んだデータが気づいたときには壊れていた、といった現象が起こり得ます。

じゃあどのくらい手前でやめたらいいの?という問いには、SSDやNANDのベンダも明確な答えを出せていないように思えます。MLCタイプのNANDの書き換え回数の限界は5,000回や10,000回と指定されていることが多いのですが、これらは大分余裕を持った値になっているようです。慎重を期すならその程度の書き換えが生じたら使用をやめた方がいいということでしょう。

このように、SSDをはじめとしたNANDフラッシュ製品の"寿命"は、書き換え回数でスパッと表せるものではありません。多数回の書き換えを行ったNANDフラッシュ製品を使い続ける場合は、保持エラーによるデータ破損のリスクを念頭に置いた方がよいでしょう。同時に、NANDフラッシュ製品を長期間使用せずにしまい込むのもおすすめできません。

余談ですが、これからのSSDのコントローラを評価するにあたり、ECCの強化を始めとした寿命延伸機能は重要なファクターになると思います。既にプチフリSSDはほぼ根絶され、各社のSSD間の体感速度の差は縮まりつつあります。そんな中で他社との差を打ち出すのに、"高耐久性"は有用なアピールポイントとなるでしょう。例えば、前々回紹介したように、SandForce社のSF-1200/1500は、512バイト中192bitのエラーを訂正できるECCを持つほか、書き込みデータのオンライン圧縮による書き込み量の減少、RAID5に似た冗長データ(RAISE:Redundant Array of Independent Silicon Elements)の付加、全体の27%もの予備領域の確保、詳細不明ながらリードディスターブやデータ保持エラーへの対策など、野心的な寿命延伸機能を盛り込んだコントローラです。SF-1200/1500搭載SSDは、ともすれば"ランダムライトは割と速いけどコストパフォーマンスが微妙なSSD"という評価を受けがちですが、実際には高耐久性が求められる用途向けの製品と言えます。

というわけでJSMonitorについて…

今までツッコミが無かったのは皆様の優しさだと思っているのですが、以上のような背景を考えるとJSMonitorのような"寿命予測"ソフトはちょっと考え物です。まあ若さ故の過ちというか、今の状態だと逆に怖くてこんなソフトは公開できないでしょうね…
何が問題かというと、今のインタフェースだと"何年何月にお前のSSD壊れるよ?"と宣言しているようにしか見えない点です。前述したように、平均書き換え回数5,000回とか10,000回に明確なラインとしての意味があるわけではなく、その回数を越えた直後に壊れるという事例はむしろ少ないと思われます。
しかし、JSMonitorを使えば、例えばSSDへの書き込み量を減らす対策が効を奏しているのを検出できるなど、書き込み量のロギング・モニタリング機能そのものにはある程度意味があると思います。いつの間にか寿命予測機能が無くなっていたHDD Healthと同じ運命というのはちょっと悲しいので、もう少し見せ方を考えるべきかなあという感じです。今のところは、"SSD Tips"みたいな情報表示欄を作って、初回起動時に"T.E.Cの意味は何か?"を表示するというのを考えています。何かいいアイディアのある方はぜひコメントをお願いします。